平成21年5月21日から裁判員制度が始まりましたが,裁判員制度のことがよく分からないという方のために,裁判員制度について説明します。
国民から選ばれた裁判員と裁判官が一緒に刑事裁判に参加し,被告人が有罪か無罪か,有罪であればどのような刑罰を与えるかを決める制度です。
原則として,裁判員は6人,裁判官は3人です。
この制度が始まることによって
- 国民の感覚が裁判に生かされ,裁判が身近に感じられる
- これまでよりも裁判の進行が早くなり,分かりやすくなる
- 普段意識することが少ない犯罪や社会のことを考えるきっかけになり,防犯意識が高まる
という効果が期待されています。
なお,裁判員裁判の対象となる事件は
- 人を殺した殺人罪
- 強盗犯人が人に怪我を負わせた強盗致傷罪
- 人が住んでいる家に火をつけた現住建造物等放火罪
- 身代金を取る目的で人を誘拐した身代金目的誘拐罪
などの重大な事件です。
裁判員は,衆議院議員の選挙権を有する18歳以上の人の中から選ばれます。
ただし,次のような人は裁判員にはなれません。
- 義務教育を修了していない人
- 事件関係者や司法関係者
- 県知事や市町村長
- 裁判所が不公平な裁判をするおそれがあると認めた人
また,次のような人は裁判員を辞退できます。
- 70歳以上の人
- 地方公共団体の議会の議員(会期中のみ)
- 学生
- 生徒
- 過去5年以内に裁判員を務めたことがある人
- やむを得ない理由で裁判員の仕事をすることや裁判所へ行くのが難しい人
辞退できるのはこのような場合だけで,単純に「仕事が忙しい」「裁判員をやりたくない」という理由だけでは辞退は認められません。
ただし,やむを得ない理由,例えば
- 重い病気にかかっていたり,怪我をしているため,裁判所に行くことが難しい
- 家族や同居している人の世話をしなくてはならない
- 自分が裁判員に選ばれると,仕事上で大きな損害が生じるおそれがある
- 父母の葬式などのどうしても外せない大事な用件がある
- 妊娠中又は出産の日から8週間を経過していない
- 裁判所の担当地域外に住んでいる(単身赴任で県外に住んでいる場合など)
- 自分や第三者(介護している近所の人など)の健康や精神上に重大な不利益が生じる
などの事情があって,その理由が裁判官に認められれば,辞退することができます。
《前年秋頃》
裁判員候補者名簿の作成
- 選挙人名簿をもとにして,翌年の裁判員候補者をクジで選びます。
- この名簿は翌年1年間使用されます。
《前年11月頃》
候補者へ通知・調査票の送付
- 通知…候補者名簿に名前が載った方へのお知らせです。
- 調査票…候補者の事情をからかじめお尋ねする書類です。
調査票によって,1年間を通じた辞退理由や裁判員になれない理由を認められた方は,裁判所に呼ばれることはありません。
《裁判の6週間前まで》
選任手続期日のお知らせ・質問票の送付
- 事件ごとにクジで候補者が50~100人選ばれます
- 質問票…裁判期間中の辞退理由の有無などをお尋ねする書類です。
質問票によって,事前に辞退が認められた方や裁判員になれない理由を認められた方は,呼出を取り消され,裁判所に行く必要はありません。
《呼出の日》
選任手続期日
- お住いの地域の担当裁判所(岐阜県の場合は,岐阜地方裁判所)へ行きます。
- 候補者待合室では,裁判所職員によって被告人の名前や事件のおおまかな説明などがされます。
- 当日の質問票も用意されており,事件との関係などについて尋ねられます。
- 最後に,裁判官から辞退理由や公平な裁判ができるかなどについて質問があります。
- これらの手続が終わると,辞退が認められた人や裁判員になれない人以外の候補者はさらにクジで絞られ,最終的に6人が正式な裁判員に選ばれます。
裁判員の方には,審理,評議・評決,判決に参加していただくことになります。
《審理》
裁判所の法廷で,裁判官と一緒に,検察官や弁護人から提出された証拠を直接自分の目で見たり,証人の話を聞いたりすることです。
最終的に,検察官は,被告人にどのような刑を与えることが適当かについての意見を述べ,弁護人,被告人も意見を述べて審理が終わります。
《評議・評決》
審理を踏まえ,裁判官と裁判員は,被告人が有罪かどうか,有罪ならどのような刑にするのか話し合うことです。
結論は全員一致するのが理想ですが,どうしても意見が合わない場合は多数決で決めることになります。
《判決》
評議・評決で決まった刑罰の内容などを,裁判官が被告人に言い渡す判決に立ち会います。
このように,判決が言い渡されるまでが裁判員の仕事となります。
裁判員に選ばれると,秘密を漏らしてはいけない義務が課せられます。
これを守秘義務といいます。
守秘義務は,裁判員を務めている間だけではなく,裁判員の役目を終えた後も守らなければなりません。
この義務に違反して秘密を漏らした場合,刑罰が科せられることがあります。
ここでいう秘密とは
- 誰がどんな意見を述べたかという評議・評決の中身や経過
- 裁判員をする上で知り得た個人情報
などです。
これは,評議・評決の内容が公にされると,批判などを気にして裁判員の方が自由に発言することができなくなるおそれがあるからですし,個人のプライバシーを他人に話すというのは,守秘義務という問題以前に一般常識として考えれば当然のことです。
ただし,公開の法廷でのやりとり,言い渡された判決の内容などの誰でも知ることができる内容については話すことを禁止されておりませんし,裁判員としての体験談や感想なども,守秘義務に当たらない範囲であれば話していただいても構いません。
ここ最近社会問題になっている「振り込め詐欺」をご存じの方は大勢みえると思います。
この詐欺被害を未然に防ぐためにも
- 手続上必要なので,至急お金を指定口座に振り込んでください。
- 住所,氏名,生年月日,電話番号,職業,家族構成を教えてください。
- 裁判員講習のため〇万円を支給するので口座番号を教えてください。
- 〇万円支払ってもらえば裁判員を辞退できます。
などの連絡があっても
絶対に応じないでください。
これまでの説明に出てきた調査票や質問票によってお尋ねすることがある場合を除き
- 裁判所,検察庁,弁護人がお金や個人情報を要求すること
- 裁判員になるための講習
- お金を支払えば裁判員を辞退できるという決まり
などは一切ありません。
裁判員制度の名を使ってお金や個人情報について尋ねてきたら,詐欺だと疑ってください。
裁判員や裁判員候補者にお金を負担していただくことは一切ありませんし,支払っていただく必要もありません。
裁判員制度で求められるのは「あなたの視点・あなたの感覚・あなたの言葉」だけです。